2020年11月、東京都葛飾区立東金町小学校にて、6年生3学期理科『電気の利用』での[e-Craftシリーズ]『embot(エムボット)』活用事例の教員向け研修会を行いました。
研修では、embotと「照度センサー」を組み合わせたプログラミングを体験し、最終的には電気を効率的に使うオリジナルのプログラム作成に挑戦。
プログラミングの授業が貴重な学びの時間になるために必要なことは?そのヒントが見つかる研修会となりました。
研修会冒頭で、「プログラミング教育と聞いて思い浮かべることは?」と鈴木先生から、質問がありました。
先生方からの答えで一番多かったのは「論理的思考」。それ以外にも、「PC,アンプラグド、最先端、フローチャート」などが挙がりました。
中には「コンピューターを使うので難しそう」などの声も。
続いて、「身の回りのコンピューターが使われているものをできるだけ書いてください」とのお題が。
「パソコン、携帯、タブレット、テレビ、エアコン」などの回答が挙がりました。実際の授業でも子ども達に身の回りでコンピューターやプログラミングが多く使われていることを認識させてから授業に入ることで、子ども達の興味関心を引き出すことができるそうです。
また、子ども達が挙げた身近なものに、「もし○○なら、△△を実行する」(条件分岐)などの動きがあるかどうかに低学年のうちから注目させておくと、その後の理科でのプログラミング学習に活きてくるとのお話もありました。
今後、中学高校でも「情報」などの教科でプログラミング学習が必修となることから、小学校で「プログラミングは楽しい!」と子ども達が思えるように中学へ送り出す必要があり、この実感があるかないかで、中学以降の学習意欲が違ってくるとのことでした。ほかにもプログラミング教育の定義や、それを通して身に付けたい資質・能力についての概要のお話を頂きました。
まず鈴木先生から、「身の回りで、効率的に電気を利用しているものは?」という質問。
電化製品のエコモードやトイレや街灯、玄関などの人を感知して明かりがつく仕組みなどの答えが挙がり、さっそく実技研修へ入っていきます。
今回使ったのは、
① プログラミングに使うタブレット
② embot A分類対応 理科用ダンボールセット
③ 照度センサー(Sizuku)
の3点です。
また、タブレットでの操作について説明があり、「startブロック」と「endブロック」の間に「functionブロック(機能ブロック)」をつなぎ、ロボットへの動きの指示を入れて行くことなど、基本的なプログラムの作り方について教わった後、本題の「効率的な電気の利用」のプログラムに入っていきます。
操作説明の後は、街灯のような決まった時間になるまで待ち、その条件になったら動きを実行するというプログラミングに挑戦しました。
今回は、例として「18秒待ってライトをつけ、22秒になったらライトを消す」というプログラミングに挑戦しました。
「function」ブロックの前に、「wait」(待つ)のブロックを入れ、条件となる時間を設定しながら取り組んでいきます。
embotのアプリはフローチャート式を導入。実際に目で見ながら、今どんなプログラミングが実行されているかを確認することができます。試行錯誤しながら思った通りのプログラムを作る体験をするのにぴったりな教材です。
鈴木先生からは分からなかったら、「お隣どうしで、ぜひ自由に教え合うなどしてください。」と声かけがありました。
embotでは「補助教材セット」もご用意(今回使用した「embot A分類対応 理科用ダンボールセット」も含まれます)。たとえば授業でそのまま流せるアニメ動画DVDでは、アプリの基本的な使い方はもちろん、プログラムを作成する手順やどんなことに気を付けたらいいかなども解説しています。初めて授業を実施する先生でも安心して取り組んでいただけます。
次に、しずく型の照度センターを使ったプログラミングに挑戦しました。
embotとセンサーについて
embotはセンサーと連携して、センサーの値によってembotを動かすことができます。
照度センサーを使うと、暗くなったらライトが自動でつき、明るくなったら自動でライトを消すというプログラミングをつくることができます。センサーを利用することで、時間でライトを制御するより、効率的に電気を利用できるということに気がつきます。
照度センサーが感じる数値は、明るい程大きな数字となり、暗い程、数字は小さくなります。
同じ教室内でも、電灯や窓からの光で照度センサーが感じる光の数値には大きな違いがあり、授業前にあらかじめ照度を確認しておく必要があることなどのアドバイスが鈴木先生からありました。
先生方は、手元のセンサーで明るさの数値を確認しながら、条件を入力。隣の方と相談しながら、プログラミングに取り組みました。
実技研修の最後には、学習したことを使って、身の回りの課題を解決するためのオリジナルのプログラミングに挑戦しました。
グループで議論しながら、アイディアを出していきます。
この内容は6年生の探究学習にも相当する内容で実際の授業でも盛り上がる内容との事ですが、同じように先生方からも豊富なアイディアが出て、にぎやかな時間となりました。
鈴木先生からは、「時間と明るさを組み合わせると、実際にあるものに近いものが作れると思います」とアドバイスがありました。
約15分後、我こそはというチームから、オリジナルのプログラミング作品について発表がありました。
「照度センサーをそのまま使い、暗くなったら、街灯のライトで帰宅を促せるように点滅するようにしました」
「トイレなどでのライトのつけっぱなし防止のプログラミングです。ライトがつけっぱなしの時に、照度センサーを使い、明るい状態が長く続くと、3回点滅。ライトがつけっぱなしである事を知らせた後、10秒待ったら自動でライトが消えるプログラミングを作りました」
などの素晴らしいアイディアが出ました。先生方からのプログラムコードの共有があり、大いに盛り上がる授業となりました。
鈴木先生から、「センサー」を使った授業で教員として心得ておきたい事として、センサーは「ずっと」と「もし」の合わせ技である事というお話がありました。
センサーは、ずっと働き続けていて、条件が来たら動くという所が大事で、これは人間にはできない所なので、このことを知っておくと授業での指導がしやすくなるとのことです。
締めくくりには、プログラミングの授業の事例紹介と参考資料の共有があり、プログラミングの授業で大切にしたい事についてご紹介がありました。
プログラミングの授業では、何より試行錯誤が大切。あてずっぽうにプログラムして、動きが完成したとしても学びは深まりません。
あらかじめ付箋などに動きを書き、プログラムを予想すること。そして、予想した後に、実際に試してみて、うまく行かなければまた予想に戻り、何回か確かめてやってみるという試行錯誤の過程が何より大切なので、ぜひ取り組んでほしいとおっしゃっていました。
また授業では、子ども達自らが課題解決をしていく過程を大切にし、高学年になるほど子供たち同士で対話して進めていく環境をととのえることも大事。教師としては見守る立場でいることも忘れないでいたいとのお話がありました。
「プログラミングの時間は、自主性、計画性、創造性が養える時間。限られた時間でも、子ども達にとって貴重な学びの時間になると確信しています」と鈴木先生からの言葉があり、大きな拍手とともに研修会は締めくくられました。
<フォトグラファー:鈴木智哉 / ライター:柳澤聖子>