プログラミング経験ゼロの先生が、たったひとりで授業を実施!?その成功の裏側とは。【宮城教育大学附属小インタビュー・後編】

2019.6.27

前回の記事では、宮城教育大学附属小学校で行ったembotを活用した授業についてのインタビュー前編として、実際の授業2時間のうち、前半の1時間で行った「物語を想像する」部分を中心にお伝えしました。

後編である今回は、いよいよ児童たちがタブレットを使ってはじめてのプログラミングに挑戦します!果たして、プログラミング未経験の先生による授業はうまくいくのでしょうか……?


<2時間目>初めてのプログラミング。子どもたちの反応やいかに!?

ーー2コマのうち、後半の授業では、embotの特徴である直感的に操作できるブロックを触りながら、児童たちが初めてのプログラミングに挑戦したそうですね。

大久保先生:実は、小学2年生にはプログラミングは難しいのではないか……と、当初は心配をしていました。しかし、児童は私の予想を裏切り、タブレットでサクサクとembotのアプリを使いこなします。
授業の一部では、『ペアプログラミング(2名が協力してひとつのプログラムを指示する担当・手を動かす担当という役割を交互に分担して作り、動かすこと)』も導入しました。ペアになったことで自然と児童同士が「それはプログラミングの順番が違うんじゃない?」と指摘しあったり、「そのアイディアはいいね。やってみよう!」とお互いの発想を認め合うなど、児童の間で建設的な会話が生まれ、よりプログラミングへの理解を深めることにつながったと思います。

宮城教育大学4年生 澤田美月さん。今年度の4月から小学校教員として教壇に立つ。

澤田さん:embotの特徴である、シンプルで易しい表現を使ったプログラミングも、この学年の児童たちに適していたと思います。たとえば、embotには、動きを抽象的に指示するブロックがあります。『45度回す』『90度傾ける』といった具体的な角度を指定するのではなく、『アニメ1のように動かしてみる』など、目で見た動きを想像できるコマンドのことです。まだ角度の単元を学習していない2年生の児童でも、アニメーションをもとにした動きのイメージができ、プログラミングするのも特にハードルは感じていなかったようです。このフローチャートやアニメーションをふんだんに使ったembotならではのプログラミングであれば、低学年の児童でも楽しみながら取り組むことができます。

安藤先生:実際、授業実施の前後で児童たちのプログラミングに対する印象の変化をSD法という手法で検証したところ、各項目でポジティブな変化が見て取れました。

 

澤田さん:これには、ふだん子どもたちが親しんでいるタブレットを使用したことも効果的だったのではと感じています。パソコンだと、まだマウスが手からはみ出してしまう子もいるので。

ーーところで、大久保先生は理科や算数といった理系科目ではなく、図画工作がご専門と伺いました。学生時代などに、プログラミングのご経験はあったのでしょうか。

宮城教育大学附属小学校 2年生担任 大久保達郎先生。実は先生自身もプログラミングは初体験。

大久保先生:多くの先生方と同じように、そもそも私もプログラミングの経験がまったくありませんでした。ただ、各学校には情報主任と呼ばれる、先生方のパソコンや授業でつかう情報端末のケアをする担当が配置されていて、私もたまたまその係で……立場上、自分が先陣を切ってプログラミング教育をやらなければならない、という地点からのスタートでした。
当時は、学校側としても「よくわからない」「大変そう」と、プログラミング教育への理解が充分とは言えず、私自身もどう推進していくべきかわかりませんでした。職場の仲間と色々考えはしたのですが、なかなか埒が明かないため、プログラミング教育について研究している宮城教育大学の安藤先生に協力を仰いだのです。

ーー安藤先生とコンタクトをとってすぐ、embotを用いた授業の実施が決まったのでしょうか?

大久保先生:以前教育実習生として小学校に来ていた澤田さんが、安藤先生のところでプログラミング教育の在り方を研究しているということで、タッグを組んで、さまざまな教材や授業方法を一緒に検討しました。ところが、本体の価格や入手のしやすさ、授業への活用方法といった面から、なかなか実施方法の確定ができずにいたんです。
そんな中、レベルごとにわけられたシンプルなつくりで、低学年でもトライしやすい教材があるぞということで、embotでやってみようということになりました。

安藤先生:プログラミングがレベルごとに細かく分けられていて、範囲を区切りやすいのが、embotを学校の授業で取り入れやすい理由のひとつです。今回は対象が低学年の児童であることと、「プログラミング未経験の教師と子どもたちが、スムーズにプログラミング授業を行えること」を検証内容の1つとしていたことから、level.1でできる範囲で授業を設計しました。
対象となる児童の学年が変われば、level.2、level.3とステージを上げていくこともできるのは、学年によってできることが大きく変わる、小学校教育でのプログラミング教育にembotを用いる利点といえますね。

ーー未経験の教師と子どもたちによるスムーズなプログラミング授業のために、ステップ・バイ・ステップで学習を進められる「カード型の副教材」も準備されたそうですね。

澤田さん:はい、カード教材は学年縦割りで実施しているクラブ活動で役に立ちました。このカードには、1枚ごとに階層分析という方法で構造化された「お題」が書かれており、無理なくembotプログラミングのアルゴリズムが理解できるようにできているので、先生が目標の階層まで取り組むことを指示すれば、きちんとembotを動かすことができるようになっています。
これは、プログラミングに対する理解の速さに凸凹がある児童たちをフォローする助けになり、先生がたったおひとりで授業を実施されるという状況でもスムーズに授業を進めることができた秘訣のひとつといえます。
児童の中には、ひとりでどんどん先のステップに進んだ結果、プログラムが思いつかなくなる場面も見られたのですが、カードという副教材があることで、落ち着いて前のステップに戻ることができ、間違ったポイントからもう一度やり直す姿も見られました。

ーー最後に、この宮城教育大学付属小学校での取り組み全体を通じ、授業を行った先生方が肌で感じたembotの魅力を改めて教えてください。

 

宮城教育大学 技術教育講座 安藤明伸 教授。自身の専門は中等教育ということで、大久保先生の話す小学生のエピソードに興味津々。

澤田さん:今回の授業は5月と11月に実施したのですが、子どもというのはたった半年でできることが大きく変わるんですね。そのときの児童たちの能力にあわせて難易度を調整し、柔軟に通常授業に組み入れられるのは、embotならではの利点ではないでしょうか。

大久保先生:プログラミングに大切なのは、ひとつひとつのステップを積み上げて行くこと。基本のプログラムが書けていないと、発展したコマンドを実行することはできないのです。
後日談ですが、国語の授業で「会話の順番」について学んだときのことが印象に残っています。最初と最後の発言を入れ替えると、会話の意味が成立しなくなることを学習する単元だったのですが、児童から自然と「順番を入れ替えちゃうとダメって、プログラミングと一緒だね!」「そのとおり、その意見に私も賛成!」という言葉が次々に発せられました。2年生なりに”ものごとの順序”の概念を理解したんですね。
embotを使ったプログラミングから学んだことが、普段の生活や事象と結びつくことで、他の教科の理解促進にも繋がっていくことが実感できました。

安藤先生:embotは機能がレベル分けされて上手に隠されている点が他教材にはない素晴らしさだと思います。最初から使えるブロックが見えすぎていると、自由度が高い反面、何をして良いか分からなくなるなど混乱を招く面もありますよね。embotは、「もっとこうしたいのに!」という欲求不満や、「こんな動きはできないかな?」といった好奇心を引き出し、学習意欲に繋げ、児童の理解度に合わせて段階的に学ぶことができます。
また、プログラミング教育に関する有識者会議で議論されたような「感性を働かせながら、よりよい社会や人生の在り方について考え、学んだことを生かそうとする姿勢」を養うことにも最適な教材であると言えるでしょう。


まだ手探りな部分も多い、「小学校でのプログラミング教育」。
e-Craft運営チームは、こういった取組みの事例紹介を通じて、全国の先生方の参考になる情報の発信を続けていきます!

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