コラム

「創造力」の意味とは?「発想力」とは違うもの?

子どもにさまざまな遊びや習い事をさせる時、「創造力が身につく」という言葉を聞いたことはありませんか?「何かを作ることかな…」というイメージが強いかもしれませんが、創造力とは、実は大人になり社会に出ても役立つ大切な力なのです。今回は、創造力とはどのようなものなのか、またどのように伸ばしていけば良いのか、具体的な方法をご紹介します。

「創造力」とは?

「創造力」の定義

「創造力」とは、「独自の方法で、新しい何かを創り出す力」のことです。英語でcreativity(クリエイティビティ)と表現した方がイメージしやすいかもしれませんが、自分で考えてゼロから何かを作り出すことを指し、子どもが工作の時間に好きなものを作るような場面で発揮されます。これは大人の世界でも役に立つ力で、例えば仕事で新しい価値を生み出したり、課題に対してこれまでになかったような解決方法を見出したりと、生涯役に立つ能力であると言えます。

「創造力」と「発想力」の違い

創造力と似た意味で使われる言葉に「発想力」があります。発想力とは、これまでに得た知識や経験をもとに、さらなる新しいアイデアを生み出す力のことです。「新しいものを生み出す」という点では創造力と重なる部分がありますが、一番大きな違いは「実際に作るかどうか」という点です。

何かに取り組む時、新しいアイデアを次々と思いつくことができる人は「発想力」があると言えますが、それを実際に形にするためには「創造力」が必要です。両者は深く関わり合う場面がたくさんありますが、創造力は、発想力を活かして行動へと一歩踏み出した能力だと言えるでしょう。

創造力を鍛えることのメリット

「創造力が豊か」と言うと、「工作が得意な子ども」をイメージするかもしれません。これももちろん正解のひとつだと言えますが、創造力が本当の意味で役立つのは、大人になり社会に出てからです。

情報化が進む現代では、これまで人間が担ってきたさまざまな仕事がコンピュータに置き換えられてきています。例えば、「新幹線の予約を取る」「駅で切符をきる」といった仕事は、かつて100パーセント人の手で行われていたものですが、今ではどちらもコンピュータで処理することが多く、すっかり日常のシーンとして定着しています。今の子どもたちが大人になる頃には、今では考えられないようなものがシステム化され、職業観も大きく変化しているかもしれません。

そんな時代を生き抜く上で必要なのは、新しい価値を生み出していく「創造力」です。これは「新しい仕事をひらめく(=発想力)」のみにとどまらず、発想する過程も含めた「価値を創造していく能力」を指しています。例えば、米国の心理学者カウフマンは、創造力について下記のような「4C」というレベルを提唱しています(*1)。

ミニC:体験や出来事を自分なりに新しい意味を持てるように捉えたり、行動したりしていくこと。
例)学校で習った算数の知識をもとに、理科の実験でのデータの分析の仕方を考えた。

リトルC:毎日の生活の中で、新しい問題解決の方法を実行していくこと。自分だけではなく他人にも価値がある内容となるレベル。
例)家に残っている材料を使って、家族が喜ぶ料理を作ってあげた。

プロC:革命的とは言えないが、専門家やその分野の職業として申し分ないレベルの新しい考えや行動。
例)自分で描いた絵画の作品が、作品展で賞をもらった。

ビッグC:歴史に残るような新しいアイデアや物、行動。
例)発表した論文が後に教科書に載るような内容として扱われた。

創造力のレベルが高いほど、実社会でもより必要とされる存在になれることが分かります。こうした力を子どものうちから鍛えておくことで、年齢や社会的な役割の変化に合わせて、新しい価値を生み出す力に変えていけるでしょう。

創造力の鍛錬に効果あり!トレーニング方法

日常の遊びの中でできる創造力トレーニング

創造力を育んでいくためには、必ずしも難しいことをする必要はありません。創造力を鍛えるヒントは、実は子どもたちの日常生活の中にも多くあります。

以下にご紹介する「遊び」は、創造力を鍛える上でもおすすめです。

・砂場遊び
・ごっこ遊び(おうちごっこ、お医者さんごっこ、幼稚園ごっこなど)
・お絵かき
・ブロック遊び
・ねんど遊び
・工作

こうして見ると、どれもまさに「クリエイティブな遊び」なのですが、ただ自由にものを創作するという意味ではありません。先ほどご紹介したような「創造力のレベル」を少し意識するだけでも、遊びの中で自然と創造力が鍛えられていることが分かります。

例えば、まずはブロックで自分なりに考えた乗り物の形を作ったとします。この段階では自分にとって意味があるものという位置づけなので、ミニCレベルです。それを別のお友達が作ったブロックの動物と合わせて新しい世界を作るといった具合にごっこ遊びをします。この段階では、お友達も一緒に楽しめるという価値が実現されているので、リトルCレベルです。そして、さらに自分なりに工夫して発展させ、複雑なロボットを作り、コンテストで賞を取るレベルになったら、プロCレベルです。こういった経験を積み重ねていったら、もしかしたらそのうちビッグCレベルの発明をするようになるかもしれませんね。

子どもは、成長に合わせて自然とこのような創造力トレーニングを積み重ねているもの。これをあたたかく見守りながら、時には大人も参加して一緒に遊び、上記のようなステップを意識した声かけをするのもいいかもしれません。

習い事も効果あり

創造力を鍛えるために大人ができる関わり方としては、「習い事」を一緒に選ぶことも有効です。例えば、幼児期から人気のリトミックやピアノ教室は、表現力や創造力を身につけるのに役立ちますし、小学生になればプログラミング教室も人気です。手順や効率を考えながら楽しく課題に取り組むので、創造力やプログラミング的思考が育まれるほか、コンピュータなどの情報技術に触れる機会も得られるでしょう。

大切なのは、子どもが好きで楽しく取り組めるものを選ぶこと。一緒に体験教室に参加したりしながら、子どもは「好き」「楽しい」の視点を大切にしつつ、大人は「創造力を鍛えることができるか」という視点を参考にしてみるのもおすすめです。

*1
Kaufman, James C., and Ronald A. Beghetto. “Beyond big and little: The four c model of creativity.” Review of general psychology 13.1 (2009): 1-12.

<監修>

坂野 真理先生
子どものこころ専門医。
日本医科大学卒業後、東京大学医学部附属病院小児科、医療福祉センター倉吉病院精神科などを経て、英国キングスカレッジロンドンの精神医学・心理学・神経科学研究所にて修士号を取得。
2018年より「虹の森クリニック」院長を務め、2020年には英国に「虹の森センターロンドン」を開設。

資格:精神保健指定医、日本精神神経学会専門医・指導医、日本児童青年精神医学会認定医、子どものこころ専門医、日本医師会認定産業医

虹の森クリニック
https://www.nijinomori-dr.com/

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